この記事で整理すること

  • 誰に残したいかを先に決めると、残し方が決まる
  • 年表や写真への説明など、小さな残し方から始められる
  • 記録では解決しないことは、別に進める

誰に残したいかを先に決める

仕事の記録は、渡す相手によって中身が変わります。社員に渡すなら、一緒に乗り越えた仕事や、それぞれの持ち場の話が中心になります。取引先に渡すなら、長い付き合いへのお礼と、仕事の歩みを短くまとめたものが合うかもしれません。家族や孫に渡すなら、なぜこの仕事を始めたのか、どんな日々だったのかを、自分の言葉で残せます。

自分のために残す記録もあります。誰かに見せる予定がなくても、やってきたことを一度並べてみると、会社を閉じるかどうかを考えるときの支えになることがあります。

何を残すかを書き出す

中小機構のJ-Net21は、事業承継の準備を説明する中で、企業理念や組織風土、技術、顧客との関係性を挙げています。これらは貸借対照表に載らず、本人には当たり前のものが多いため、経営者自身も後継者も気づきにくい、という説明です。仕事の記録を作ることは、こうした目に見えないものを言葉にする作業でもあります。

最初から文章にしようとせず、材料を集めるところから始めます。手元にあるものと、誰かに聞けば分かるものを分けておくと、後でまとめやすくなります。

  • 創業の年、移転、新しい設備、大きな仕事など、節目の出来事と年
  • 工場や店、道具、製品、社員が写った写真
  • 図面、手順書、帳面、最初の名刺やチラシなど、仕事の跡が残るもの
  • 大切にしてきた考え方や、繰り返し口にしてきた言葉

小さな残し方から、一冊の本まで

残し方には、手間の小さいものから大きいものまであります。いきなり本を目指さなくても、小さな残し方を重ねていけば、それがそのまま冊子や本の材料になります。

年表は、紙一枚に年と出来事を書くだけで作れます。写真には、いつ、どこで、誰が写っているか、そのとき何をしていたかを一行ずつ添えます。説明のない写真は、撮った本人に聞けなくなると、何の写真か分からなくなりやすいためです。昔の話は、スマートフォンの録音機能で残せます。一回に全部を話そうとせず、「創業のころ」「いちばん大変だった仕事」など、題を決めて少しずつ録ると続けやすくなります。

材料がそろってきたら、写真と年表と短い文章を綴じた冊子にすることも、本の形にまとめることもできます。どの形にするかは、渡したい相手と部数で決めれば十分です。

  • 年表:紙一枚に、年と出来事を書く
  • 写真に説明:一枚ごとに、いつ・どこで・誰が・何をしていたかを一行添える
  • 声の記録:題を決めて、昔の話を少しずつ録音する
  • 冊子:写真、年表、短い文章を綴じて、必要な人に配る
  • 本:材料がそろったら、一冊にまとめる

社員や家族にも話を聞く

自分が覚えていない場面を、社員や家族が覚えていることがあります。古くからいる社員に、入社したころのこと、印象に残っている仕事を聞くと、自分一人では書けない記録になります。家族には、家から見た会社の姿を聞けます。

社員にとっては、職場がなくなると知らされた後の時期です。話を聞くのは雇用や支払の説明が済んでからにして、話したくなければ話さなくてかまわないこと、返事はその場でなくてよいことを、先に伝えます。話を録音したり、写真や名前を記録に載せたりするときは、先に本人に断ります。どこまで載せてよいか、誰に配るものかも伝えておきます。取引先の名前や取引の金額など、相手のある情報を載せるときも同じです。

公開しない残し方もある

仕事の記録は、広く公開しなくてもかまいません。家族だけ、社員だけ、取引先だけに配る残し方もあります。配る範囲を決めておくと、載せる内容も決めやすくなります。

一方で、多くの人に配る冊子や本にする場合には、知っておきたい決まりがあります。国立国会図書館によると、社史・団体史や個人の自費出版物でも、頒布を目的として相当部数(通常100部以上)を作成し頒布するものは、国立国会図書館への納本の対象になります。納入義務があるのは1部で、発行の日から30日以内に納めることと定められています。家族や社員だけに少しの部数を配る記録とは、扱いが変わります。納入の義務があるのは、本の発行者です。社史のように社内や取引先に配るものでも、相当の部数を作って配るものは対象になるとされています(ホチキス留めなどの簡易な綴じのものは対象外)。国立国会図書館は、納本された出版物を広く利用できるようにするとしています。名前や写真を載せる人には、断るときにこのことも伝えておきます。対象になるか迷うときは、国立国会図書館に問い合わせることもできます。

記録で解決しないことは、別に進める

仕事の記録は、やってきたことを残すためのものです。社員の次の働き先、取引先への説明、残っている支払といった課題は、記録を作っても解決しません。記録づくりと並行して、こうした課題は別に進めます。社員への伝え方は会社をたたむことを社員にどう伝えるかの記事、全体の手順は会社をたたむ手順を一枚に並べた記事にまとめています。

承継や売却を選ぶ場合にも、仕事の記録は役に立ちます。技術や取引先との関係、大切にしてきた考え方を言葉にしておくと、継ぐ人や相手に伝える資料になります。事業を引き継いでもらうときの整理は個人事業を譲るときの記事や会社売却の準備の記事で扱っています。まずは、手元にある写真を一枚選んで、裏に一行の説明を書いてみてください。

確認リスト

相談・作業の前に、ここを確認

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出典・確認日

  1. 中小機構 J-Net21|事業承継のための準備 ↗確認日:2026-10-27
  2. 国立国会図書館|企業・団体、個人からの納本 ↗確認日:2026-10-27
  3. 国立国会図書館|納本制度 ↗確認日:2026-10-27

制度の対象・期限・地域ごとの扱いは、必ず最新の公式案内でご確認ください。本文は一般的な情報と、資料を整理する手順です。個別の法律や税金の判断はしていません。